槍ヶ岳の花々(1) 2015.7.31-8.3
槍ヶ岳の花(1)
槍ヶ岳といえばあの尖ったピークを思い起こせるが、槍ヶ岳の花と言ったらどうだろうか。そう、あの尖った岩山には植物が取り付く場所がない。槍沢上部から稜線までも岩石地帯で植物にとっては不適切な領域である。なので、ここでは槍ヶ岳に登ったときに会った花々を挙げてみたい。上高地ー徳沢ー槍沢ー氷河公園ー南岳―槍ヶ岳ー飛騨沢ー槍平ー新穂高温泉のコースを3泊4日で歩いた時の花日記である。花の順序はコース順ではなく、科ごとにあげた。
氷河公園からの槍ヶ岳
タマアジサイ(アジサイ科)
蕾の形が玉になることから(右上に見える)。他のアジサイと違って葉がざらざらで艶が無い。旧分類はユキノシタ科。
ヤマアジサイ(アジサイ科)
葉が比較的小さくて、薄い。周辺部にある白いのは萼片で、装飾花といわれ、昆虫をよぶためといわれる。
ミヤマタネツケバナ(アブラナ科)
槍ヶ岳には花が無いと最初に書いたけれども、実はあったのです。肩の小屋から登り始めてすぐに、岩の割れ目に咲いていた。田植えの種(モミ)を植えるころに咲くということからの名前だが、高山型となると3千mの高さに生育している。北岳の稜線でも見た。
ウド(ウコギ科)
ウドの語源は不明。栽培種は地下で栽培されるので、白く柔らかいが、こんなにも大きくなったらもう硬くて食べられない。
ヒメクワガタ(オオバコ科)
果実が兜の鍬形に似ているところから。色も薄く、小さいので見過ごすことが多い。旧分類はゴマノハグサ科。
イワオトギリ(オトギリソウ科)
岩弟切で、高山に生える弟切草。弟切とは物騒な名だがいわれを書くと長くなるので、調べてください。弟切草の分類は似たものが多いので難しいが、分布域が参考になる。
ハクサンオミナエシ(オミナエシ科)
白い花をつけるオトコエシ(男郎花)に対し、優しいのでオミナエシ(女郎花)だが、エシの意味は不明。白山にあることからでキンレイカ(金鈴花)の別名もある。
イワギキョウ(キキョウ科)
名のように岩から生えているものに出会った。キキョウは漢名の桔梗を音読みしたもの。次のチシマギキョウとの違いは花の縁に毛が無いのと、萼片が細い。
チシマギキョウ(キキョウ科)
最初の産地が千島列島であったことによる。筒状の花の縁に毛が生えていることが見分けるポイント。
ソバナ(キキョウ科)
岨(そば)とは急な山地の斜面のことで、そのようなところに生えるから。菜(な)とは柔らかく、食べられる葉を意味し、食用になる。
ウサギギク(キク科)
花の下に付く2枚の葉が、ウサギの耳のように左右に付くことから。しかし、この写真では良く見えないが、似たものが無いので、花を見ただけでわかる。
クロトウヒレン(キク科)
黒唐飛簾で、花を囲む総苞が黒く、飛簾はヒレアザミに対する我国慣用の漢名で、それが外国的な印象から唐をつけたといわれる。茎にひれがついている。
サワギク(キク科)
沢菊で沢のような低湿地に生えるから。一つの花にみえるものは小さな花の集まりで頭花というが、径1cm位。
タカネヤハズハハコ(キク科)
中央の花の写真には何個の花があると思いますか?。答えは数えきれないです。7個と答えた人、それは小頭花の数です。1個に見えるのは花の集まった小頭花で、中の黄色いものが筒状の小さな花。この場合、7個の小頭花が集まって頭花(または頭状花)になっている。小頭花の周りのピンクの花弁状のものは小頭花を包む総苞片。
タカネヨモギ(キク科)
高嶺ヨモギだが平地のヨモギとは違って葉の裂片が線形で細い。一番上の頭花の中に、小さい花がぎっしり集まっているのが見える。
ハナニガナ(キク科)
食べると苦い苦菜より、大きく、葉や花も美しいので花苦菜。花弁のように見えるのが一つの花(舌状花)で5個内外のニガナより8~10個と多くて大きい。
マルバダケブキ(キク科)
丸葉岳蕗で丸い葉と山にある蕗ということ。高さも1m位で目立つ。
オタカラコウ(キク科)
雄宝香で雌宝香より大きく、強壮だから。宝香は龍脳香のことで、根茎にこの香がするから。
コウモリソウ(キク科)
葉の形からコウモリを連想するから。これは1m以下だが、これより大きいものにヨブスマソウがある。ヨブスマも蝙蝠のことで花は白い。
オオバミゾホウズキ(ゴマノハグサ科)
大葉溝ホウズキで、山野に生える溝ホウズキより標高も高い所に生え、大きい。果実がホウズキのように萼に包まれる。水の流れる所に生育。
ウツボグサ(シソ科)
靭草で、花をつける穂が弓矢を入れる武具の靭に似ているから。夏が来ると花穂(かすい)は枯れて黒くなるので夏枯草という別名もあり、漢方で利尿薬として使う。
カメバヒキオコシ(シソ科)
亀葉引起しで、葉が亀の甲に似て、葉は苦く、起死回生の効力があるということから。
この写真では葉の形がうまく撮れていない。
ジャコウソウ(シソ科)
麝香草で、茎葉をゆするとよい香がするという。
ミソガワソウ(シソ科)
味噌川草で、木曽の味噌川に多いことから。多数集まって群落をつくっている。