南天山の花
南天山は埼玉県の西部にある1483mの山である。特に特徴のある山ではなく、中津川の上流部にあり、アプローチは長いので、訪れる人も少ないと思われる。沢沿いの樹林帯を登るので、特に花が多いというわけではなかったが、分布域が限定的なタカネママコナが群落としてあった事は特筆すべきことであった。
ソバナ(キキョウ科)
岨菜で、岨は急な山や谷のことで、その様な所に生育することから。菜は茎や葉が食べられるもの。いつも上から覆いかぶさるような形を見ていたので、すぐにソバナとは考えられなかった。これは谷沿いで見たもので、花数も少なく丈も低い。
アキノキリンソウ(キク科)
麒麟草というベンケイソウ科の花があるが、そのように美しく、秋に咲くということから。麒麟草の由来は不明。
オクモミジハグマ(キク科)
奥紅葉羽熊で、葉がもみじ形、花がヤクの尾の毛で作った装飾用の羽熊のような形だから。本家のモミジハグマは葉の切れ込みが深く、モミジのようだが本種の切れ込みは小さい。奥は関西から見て、奥の方だから。
シロヨメナ(キク科)
白嫁菜で、花が嫁菜に似ていることから。秋はキク科の花が多い気がするが、ここでも5種取り上げた。キク科の特徴は多くの花(小花という)が集まって、一つの花のようになっていること。写真でみれば、白い花弁に見えるものが1つの花(舌状花)で、中心部に集まって黄色に見えるのが筒状の花(筒状花)。これが茎の先端に付くので頭花又は頭状花という。タンポポはすべて舌状花だが、2つ先にあげたヤブタバコはすべて筒状花からなる。
ミヤマコンギク(キク科)
深山紺菊で、舌状花の色が紺色で、深山に咲くから。ノコンギクのようにあまり分枝しない。ハコネギクともいう。
ミヤマヤブタバコ(キク科)
深山藪煙草で、タバコの葉に似て、藪地に生えると言う意味。頭花はすべて筒状花である。
キバナアキギリ(シソ科)
黄花秋桐で、青紫色のアキギリに対し、黄色の花を付けるから。花冠から前方に長く突き出しているのは雌しべで、花粉を付けた虫が蜜を吸いに来た時に、受粉する仕組み。
ヤマトウバナ(シソ科)
山塔花で、花序(花の付き方)が塔のように伸びているから。
ミヤマタニソバ(タデ科)
深山谷そばで、深山の谷に生育し、ソバに似ていることから。。
タカネママコナ(ハマウツボ科)
高嶺飯子菜で、若い種子が米粒の様だから。絶滅危惧Ⅱ類で分布域は秩父山地、八ヶ岳、甲斐駒ケ岳、鳳凰山などの亜高山帯となっていた。絶滅危惧Ⅱ類とは危険度を示す3ランクの3番目で、絶滅の危険が増している脆弱な状態になっているもの。
ミヤマママコナは花色が赤紫色で、下唇に白い斑紋が付くが、本種は淡黄色で、黄色い斑紋が付く。全体の大きさも少し小さい。この葉は赤紫色がかっているが、日のよく当たる所にあるとこうなるらしい。
タカネママコナの群落
ママコナやミヤマママコナは数本かたまって生えているのを見たことがあるが、これ程の群落は見たことが無い。それも3から5箇所ぐらいあった。絶滅危惧Ⅱ類とは思えないくらい‥。
ヤブハギ(マメ科)
藪萩で一見するとヌスビトハギと同じに見える。違いは葉が根元に集中しており、上部に無い。また、写真では3枚の葉が1セットになっているが、これで1枚の葉で、1つ1つを小葉という。小葉の形もヌスビトハギより幅広い。
ヤブハギ・果実
果実はヌスビトハギとほとんど同じ形で、盗人が抜き足差し足で歩く足型のようだといわれる。
ヒメレンゲ(マンネングサ科)
姫蓮華で、群れをなして平らに生えている葉の状態を、蓮の花に例えたというが、連想し難い。ほとんど終わりで少し残っていた。
ヤマジノホトトギス(ユリ科)
山路の杜鵑で、山道に咲くホトトギス。花にある斑点が鳥のホトトギスの胸の斑点を思わせることから。ヤマホトトギスは花弁が下に大きく反曲する。