北岳の花(5)
頂上手前の稜線を行く
3000mの稜線では雨、風、雪などの環境は厳しい。登山者の右側と画面の左側にハイマツが見られるが、あとは背の低い草本や木本である。冬は西風(画面右側)により東側に雪庇をつくり山を侵食していくので、東側が崖になっている。
ゴゼンタチバナ(ミズキ科)
この花が発見された白山の最高峰は御前峰ということと、実の形が橘(たちばな)に似ていたから。4枚の白い花弁状のものは苞(ほう)といい、花を包んでいるもので、中心部にあるのが花の集まり。葉は6枚の輪生に見えるが、専門的に言うと左右のやや大きい葉が対生し、それぞれの葉のわき芽が伸びて葉になったということらしい。
ミヤマムラサキ(ムラサキ科)
高山の岩場で、よくこんなところにと思われる場所に咲いている。
サンカヨウ(メギ科)
山荷葉で荷葉は蓮の葉のこと。雨に濡れると花弁が透き通る。
ミヤマイボタ(モクセイ科)
樹皮に白いイボタロウムシが寄生するイボタノキより大きく成長するらしい。一般的にはミヤマと付くと小さいのが普通。
コアジサイ(アジサイ科)
アジサイに特有な装飾花(花弁の様なもの)が無い。
アラシグサ(ユキノシタ科)
嵐草。嵐のファンは喜びそうな名だが、気象の変化のはげしい、よく荒れる高山にはえるところから。
ウメバチソウ(ユキノシタ科)
花の形が梅鉢の紋に似ているから。
5枚の花弁の内側に、細く尖った5本の雄しべがあるが、さらにその間には5本の仮雄しべがあり、細かく分かれたその先端は小さな球状になっている。
ヤグルマソウ(ユキノシタ科)
右側に見える葉の形が、端午の節句の時、鯉のぼりにつける矢車に似ているから。なお、園芸種にあるヤグルマソウは正式にはヤグルマギク。
クロクモソウ(ユキノシタ科)
黒雲の姿を連想したところから。
シコタンソウ(ユキノシタ科)
千島列島の色丹島で発見されたことによる。
一見雄しべは5本と思うが、よく見るとその間にもあり、全部で10本。
ミヤマダイモンジソウ(ユキノシタ科)
花弁の形が漢字の大の文字を描くから。
ムカゴユキノシタ(ユキノシタ科)
零余子(むかご)をつけるから。花茎の先に花を1つつけるが、その下の赤いものはムカゴである。
ウバユリ(ユリ科)
花が咲くころには葉(歯)が落ちていることから姥百合。でも写真ではまだ、葉が残っているけど。
タカネシュロソウ(シュロソウ科)
古い葉のさやが色、形ともにシュロの毛のようだから。
ツバメオモト(ユリ科)
燕万年青だが、葉は万年青(オモト)に似ているが、ツバメの由来は不明である。花の形を燕に例えたと勝手に想像するが、少し苦しいかなあ。
タマガワホトトギス(ユリ科)
黄色をヤマブキの名所、京都玉川から借りたといわれる。水気の多い沢沿いでよく見かける。
コフタバラン(ラン科)
樹林帯の中で咲いているが、高さ15cmぐらいで色も地味なので目立たない。下部に双葉が付いている。
キソチドリ(ラン科)
木曽千鳥で、信州木曽で取れたから。
だらりと下がっているのは、唇弁といわれるラン科に見られる花弁である。
トウヤクリンドウ(リンドウ科)
当薬竜胆。当薬は薬になること、竜胆(りんどう)は根が竜の胆(きも)のように苦い薬として使われることから。