稲含山の花
稲含山は上信電鉄下仁田駅の南東6kmにある1370mの山である。稲含山の名はあまり知られれていないと思うが、地元では古くから農耕の神として信仰のある山で、山頂付近には稲含神社がある。稲含というのもインドの姫君が、稲穂を密かに口に含んで、こちらに来たという伝説による。登山口の鳥居峠(標高1000m)まで、車で入れるので山頂までは2時間弱で行ける。山頂付近には岩場があるが、ほとんどは樹林帯の中の道であり、特に多くの花が見られる事は無い。ここにあげた花は主に登山口付近の開けた所と、帰りに寄った神津牧場の物見岩付近のものである。特にスミレ類はほとんど物見岩付近で撮った。
鳥居峠付近からの稲含山
フタバアオイ(ウマノスズクサ科)
これは花より団子、いや、葉が有名な植物である。この葉を3枚配置した紋がよく知られている葵の御紋。徳川家の紋章である。紋章の三つ葉葵というのは、この葉を使ったデザインで、ミツバアオイという植物は無い。では、花というと地表近くに目立たないお椀を逆にしたような花。葉に対して存在感がないですなあ。
ムラサキケマン(ケシ科)
紫華鬘で、華鬘は仏殿の装飾に使われるもので、花の形がそれに似ているから。
ヤマエンゴサク(ケシ科)
山延胡索で、延胡索は漢名。後方に伸びているのは距といって、蜜を貯める所。上記のムラサキケマンも同じ。
カキドオシ(シソ科)
垣根を通り越して増える様子からの名。
ツクバキンモンソウ(シソ科)
筑波金紋草で、筑波山で発見されたことから。よく似たニシキゴロモは、5裂した花冠の、上2つが小さいが、本種はさらに小さくほとんど見えない。また、本種は太平洋側に分布するが、ニシキゴロモは日本海側に分布。
アカネスミレ(スミレ科)
花の色が茜色だから。全体的に毛深いことと、距が長い。距とは花弁の一部が後方に長く伸びて、蜜を貯める所で、スミレによって形が違う。
アケボノスミレ(スミレ科)
花色が曙の空の色だから。葉よりも先に花が咲き、その後、葉が開く。葉裏に毛が多い。
エイザンスミレ(スミレ科)
比叡山にあることから。葉が大きく3裂し、更に細かく切れ込む。花色は白から薄いピンク色など変化がある。
オトメスミレ(スミレ科)
タチツボスミレの白花を乙女スミレという。全部白ではなく、距は薄紫色。
サクラスミレ(スミレ科)
花色が桜色で、大きい。この写真でも少し見えるが、花弁の先が少し凹んで、桜の花びらを思わせるようなものがある。花柄や葉柄に毛が多いのも特徴。
タチツボスミレ(スミレ科)
立坪菫で、坪は庭のこと。スミレでは一番多く目にする。
ニオイタチツボスミレ(スミレ科)
良い匂いがすることからだが、鼻が悪いせいかよくわからない。花柄に微毛がある。
フモトスミレ(スミレ科)
麓菫で、山のふもとにあるからだが、ふもとだけでなく、1000mぐらいの高さまで見られる。逆にふもとでは見たことがない。
マルバスミレ(スミレ科)
丸葉菫で葉が丸いから。しかし、まん丸ではなく、先が少し尖る。
ヒトリシズカ(センリョウ科)
一人静で、1本の花茎を静御前に例えた。花弁は無く、白く見えるのは雄しべで、1個の花には3本の雄しべが付く。
アズマシャクナゲ(ツツジ科)
東石楠花で、関東地方に多いことから。石楠花は漢名から。
アセビ(ツツジ科)
悪しき実からとか、足がしびれるからとか、諸説ある。馬が食べると苦しむから馬酔木とも書き、葉を煎じて殺虫剤に使われた。
ワチガイソウ(ナデシコ科)
輪違草で、名前がわからなかったので輪違の印のある鉢に植えたことから。輪違の印とは2つの輪を少しずらして重ねた形。よく似たものにヒゲネワチガイソウがあるが、花弁も葉ももう少し細く、また、花弁が5枚以上あることもある。なんだか、マチガエソウ。
ツルキンバイ(バラ科)
蔓金梅で、地面に這って広がる。ミツバツチグリは、花茎を立ち上げて、花を付けるので、花が集まって咲くが、本種は蔓を伸ばすので、花が広がっている。小葉の形も卵形になるが、ミツバツチグリは楕円形になる。
ヤドリギ(ビャクダン科)
宿り木で本来、木の上方に付くので、まじかに見ることができないが、倒木に付いていた。寄生した木から水分を吸収して生育する。枝先に小さな黄色い花を付けるが、写真では点にしかみえない。
ヤドリギ・雄花
これは別の所で撮ったものだが、花弁は無く、萼筒が4裂して、中に花粉が見える。
ホソバアマナ(ユリ科)
ミヤマエンレイソウ(シュロソウ科)
深山延齢草で、薬草として使われたから。以前はユリ科だったが、ユリ科の基本数は3で、葉、萼片、白い花弁も3つになっていて、分かりやすかった。新しい分類は形より遺伝情報が主となったので、素人には分かりにくい。写真ではわからないが、雄しべは6、雌しべの柱頭も3つに分かれている。エンレイソウには花弁が無く、萼片が黒紫色をしている。