白馬岳の花(2)
白馬岳には長大な白馬大雪渓がある。夏にも冷たい環境をつくり、豊富な水分を保つ環境は植物の生態にも大いに影響を及ぼすものと考えられる。
白馬岳大雪渓から右にのびる白馬沢
イワギキョウ(キキョウ科)
岩桔梗で桔梗は漢名から。次のチシマギキョウとの違いは、花冠に毛が無いことと、萼片が細く、鋸歯(ギザギザ)もあること。
チシマギキョウ(キキョウ科)
この写真では分かりにくいが、花冠に毛が生えている。萼片も広い。チシマは千島列島のこと。
ソバナ(キキョウ科)
ソバは急な山で、そのような所に生育するから。ナは菜で食べられる事を意味する。食べるソバは実が尖っていて、麦の代わりにできたので蕎麦(そばむぎ)といわれていたが、麦が略されてソバと言われるようになった。
ヤマホタルブクロ(キキョウ科)
山蛍袋で花の中に蛍を入れたことから。平地のホタルブクロには萼裂片の間に付属体(突起)がある。白花のほうが少ない。
ハクサンシャジン(リンドウ科)
ツリガネニンジンの高山型で花や葉が輪生する。雌しべの柱頭が花から突き出す。沙參(しゃじん)は漢名。左手前はコバイケイソウの果実。
ミヤマトリカブト(キンポウゲ科)
舞楽の時に伶人の被る冠を鳥兜というが、それに似ているから。トリカブトはいろいろな変異があり、分類は難しいが分布域で差が出るのでそれに従い、ミヤマトリカブトとした。猛毒を持っていることでも有名。
オオレイジンソウ(キンポウゲ科)
大伶人草で舞楽の時に伶人の被る冠に似ているから。トリカブトの仲間で、やはり有毒である。
ミヤマカラマツ(キンポウゲ科)
丸く咲いた花の集まりがカラマツに似ているから。萼片は花が咲くと落ち、花弁は無く、白い雄しべが唐松の葉のように付いている。雌しべは雄しべに埋もれて見えなっかたが、果実になると赤紫色になり、こちらが目立つようになった。
ミヤマキンポウゲ(キンポウゲ科)
深山金鳳花で、金属光沢を持つ花弁が特徴である。
コマクサ(ケシ科)
花の形が駒(馬)の顔に似ているから。他の植物が生えられないような砂礫地に生育する。外側の2枚の花弁は反り返るが、内側の2枚は突き出している。
ヤマルリトラノオ(オオバコ科)
山瑠璃虎の尾で色と形から。一見クガイソウにも似ているが、葉の付き方がこちらは対生でクガイソウは3~8枚の輪生。旧分類はゴマノハグサ科。
ハクサンコザクラ(サクラソウ科)
白山小桜でやや湿った所に生育する。若葉が内巻きにたたまるのはこれと花の白いヒナザクラである。また葉の鋸歯(ぎざぎざ)が上部にのみある。
イブキジャコウソウ(シソ科)
伊吹麝香草で良い匂いがするから。シソ科には良い匂いがするものが多い。中央上部に見えるのはオヤマノエンドウの果実。
ジャコウソウ(シソ科)
谷間の湿った所に生育する。麝香草で、茎葉をゆすると良い匂いがすることから。
タテヤマウツボグサ(シソ科)
立山靭草で花穂が弓矢を入れるウツボに似ているから。平地にあるウツボグサは花穂が細長いが、本種は短く1個の花が大きいので横に広がって見える。
ミソガワソウ(シソ科)
味噌川草で木曽の味噌川に多いことから。河原や谷筋のような水気の多い所に生育する。
キヌガサソウ(シュロソウ科)
衣笠草で、奈良時代に高貴な人にさしかけた衣笠に見立てたもの。葉は8枚(時に7~11枚、この株は9枚)輪生に付く。白いのは萼片(外花被)で、花弁(内花被)は線形で細く、写真では雄しべと見分けがつかない。雌しべの先(柱頭)は多数にわかれている。旧分類はユリ科。
コバイケイソウ(シュロソウ科)
小梅蕙草で梅の様な花を付け、葉が蕙蘭(漢名)に似ているから。真ん中の花穂に雌しべの子房が見えるが、下部で枝分かれした花穂には見られない。つまり雄花の集まりで、子房が見えるのは果実を付ける両性花(雄しべ、雌しべがある)。旧分類はユリ科。
リンネソウ(スイカズラ科)
植物分類学の基礎を作ったスウェーデンの学者リンネ。その名を記念したリンネソウは花が対をなしているので別名夫婦花。でもいつも一緒にいるのって煩わしくありませんか?
オオハナウド(セリ科)
独活(ウド)のような茎葉に大きい白花をつけるので、花ウド。セリ科の花はどれも似たようなものばかりだが、オオハナウドは周辺部に他より大きい花を付け、またその外側の花弁は最も大きい。
タカネイブキボウフウ(セリ科)
高嶺伊吹防風で伊吹は伊吹山から防風は漢名から。若い花は赤紫色を帯びる性質がある。
ミヤマウイキョウ(セリ科)
深山茴香で茴香は漢名から。細かく裂けた葉が特徴で、花が無くても分かる。